厚生労働省の令和2年臨床研修修了者アンケート調査結果によると初期研修を終えた76.9%の医師が大学医局に入局をしていることがわかりました。
医師として働く上で医局に入るか入らないかは避けて通れない選択です。
さらに、どこの大学医局に入るかも大きな問題。
出身大学に入るのか、それとも出身大学以外に入るのか。
そして、出身大学以外に入ると冷遇されることはあるのか。
この記事では出身大学以外に入局した医師の処遇を紹介します。
出身大学以外の医局に入る方法もお伝えします
\医局選びで失敗しないため!いろんな情報を見ておこう/
医局に入るとは?【出身大学と出身大学以外!】
医局とは医師を束ねる集団組織のこと。
サラリーマンが会社に属するのと同じです。会社が社員に部署配属を指示するように、医局も医局員に勤務先の病院を斡旋します。
医師は医局に属することで、実臨床だけでなく研究、希少症例の診療、大学院への進学、海外留学など、幅広い経験を積むことができます。
出身大学以外の医局に入局する医師の割合は?
出身大学を問わず医師は自分の好きな医局に入局することができます。
厚生労働省の令和2年臨床研修修了者アンケート調査では、出身大学に入局するのは44.3%、出身大学以外は32.6%でした。
調査結果から、入局者のうち4割以上が出身大学以外に入局していることがわかります。
出身大学以外の医局に入るとどうなる?嫌がらせはある?
では出身大学以外の医局に入るとどのような扱いを受けるのでしょうか。
差別・嫌がらせされることはない
今の時代、意外にも差別をされたり嫌がらせを受けることはありません。
過去には他大学出身者が左遷されたり僻地に飛ばされた時代があったようですが、昨今のパワハラ・モラハラを避ける傾向により嫌がらせもなくなりました。
なので「入局1年目から僻地に飛ばされた!」「出身大学の医師の方が人気病院に行かせてもらえている…」のような差別はまずありません。
医局人事が横暴だと言われる都内有名私立大の医局さえ、若手のうちは同期のくじ引きで決めるほど平等です。
想像以上に出身大学による差別はないとので安心して良いでしょう。
出世しにくい可能性はある
若手のうちは嫌がらせを受けることはありませんが、年次が上がってくるとそれなりに差を感じ始めます。
特に30代後半からは出身大学以外の医師は出世しにくいケースが多いです。
例えば同時期に、自大学出身のA医師と他大学出身のB医師が出世コースの人気病院に希望を出した場合、やはり通りやすいのはA医師です。
他にもアクセプトされやすい論文をまわしてもらえたりや留学先の優先順位を上にしてもらったりなど、自出身大学の方が有利に進めてくれます。
出世に興味がなかったり、キャリア形成に無頓着な場合は問題ないですが、医局内で登りつめていきたい人は注意しましょう。
入局直後から「いずれは出世したい!」という熱意を伝えておくと、多少考慮してもらえます。
教授を目指すなら出身大学が有利
やはり大学の顔である教授や関連病院の院長は出身大学の医師が有利です。
特に大学教授は「絶対にうちの大学の出身者じゃないとなれない!」や「ぜひ自分の大学から教授を!!」という暗黙の了解があります。
中にはには内部生(私立大学の附属高校)出身じゃないと教授になれないケースも。
今から再入学するわけにもいかないのでどうしようもありません。
さすがに内部生有利なのは極端な例ですが、自大学から教授を!という流れはどこの医局にもあります。
【教授】という職に就きたいのであれば出身大学以外に入局するのはおすすめできません。
【出身大学以外の医局】差別するか確認する方法
入局前に入りたい医局は差別があるのか確認しておきたいですよね。
ここでは3つの方法を紹介します。
大学病院のHPを見る
まず一つ目は大学病院のHPを見る方法です。
大学病院はHPを持っており、各科の医師紹介ページがあります。
そこに教授、准教授、講師、助教授、医員が紹介されているのですが、併せて出身大学も掲載されています。
医師紹介ページに載っている出身大学がどこなのかを確認してみましょう。
医局員の出身大学にバリエーションがあれば差別はなく、実力で出世していく医局です。
逆に医局員の出身大学に偏りがある、自大学ばかりの場合、かなり出世は難しいでしょう。
正直、肩身の狭い思いをする可能性が高いので入局を思い止まった方がいいと思います。
自分が入る医局がどのような出身大学者で構成されているか確認しておきましょう!
知り合いに教えてもらう
次に有効なのは先に入局している知り合いに教えてもらうことです。
大体何のつながりもない医局にいきなり飛び込もうとする人は少ないので、誰かしら知り合いや先輩が先に入局してるケースが多いでしょう。
知り合いがいる場合、「出身大学以外の入局者に対して嫌がらせはありますか?」や「いきなり県外に飛ばされることはありますか?」など内部事情を聞くことができます。
それだけでなく何年目でどの資格を取る人が多いとか、何年くらい経つと大学院や留学をする人が多い、など人事以外の進路も聞くことができます。
将来的に大学院に進学したり、海外・国内留学を考えている人にとってはかなり有益な情報ですよね。
聞いて嫌がられることはないので知り合いがいる場合は教えてもらうようにしましょう!
病院見学・入局説明会で聞く
最後は病院見学や入局説明会で聞く方法です。
さすがに入局説明会で「出身大学以外の人は嫌がらせにあったりしますか?」とは聞けませんが、やんわりどのような医局人事になるかを聞くことはできます。
例えば医師7年目のDrが入局説明会にいたとしたら「先生は7年目になるまでどの病院を経験しましたか?」と聞けば、現在の学年に至るまでに赴任した病院がわかります。
おおよそその先生からズレることはないので、「自分の7年目の姿はこんな感じか」と想像することができます。
もしその先生があちらこちらへ短期間で移動させられていたとしたら、自分も短期間の間に移動させられる可能性が高いので、覚悟しておいた方が良いですね。
先輩の実例を参考にできるので、病院見学や医局説明会ではじっくり話を聞くようにしましょう。
【人気の医局】出身大学以外は入局が難しいことも…
最近の傾向として、人気の医局は入局すら難しいこともあります。
地方で毎年入局員が足りないような大学は問題ないですが、都会の医局は定員オーバーになってしまうリスクがあります。
特に注意すべき医局を紹介します。
シーリングのある都会は要注意
都会の大学医局は人数制限があります。
例えば都内某国立大学の〇〇科は入局の定員5人のところにそれ以上の人数の研修医が入局希望を出してしまいました。
そのため、医局から入局を断られた人がいました。
- 大学出身者かつ医局の関連病院で初期研修をした医師
- 大学出身者で医局の関連病院以外で初期研修をした医師
- 他大学出身者で医局の関連病院で初期研修をした医師
- 他大学出身者で医局の関連病院以外で初期研修をした医師
この順で入局者が絞られました。
他大学出身で初期研修も関連病院で行っていない人は採用されにくいので気をつけておいた方が良いです。
早めに病院見学に行って入局のアピールをしたり、入局説明会で顔を覚えてもらうようにしましょう。
アピールをすることで熱意が伝わり、入局することができた人もいるので諦めないことが大事です。
皮膚科・眼科など人気の科は要注意
皮膚科や眼科などの人気マイナー科はシーリング制度があります。
シーリングとは科ごとの偏りを防ぐため、採用人数の制限をされてしまうことです。
シーリングに引っかかってしまうと希望した場所で働けないことがあります。
東京都内で皮膚科専門医を目指そうと思って入局したいと言ったらシーリングに引っかかってしまい、大学ではなく地方の関連病院を紹介されてしまいました。
「都内は無理そうだからとりあえず山梨で後期研修をしてきて!」と言われ、最初の数年は山梨で過ごすことに…
想像と違ったので、シーリングに引っかかりそうな人は早めに入局希望を出した方が良いです。
特に地方出身者が都内の医局に入局希望をする際にはシーリングにかかって関連病院へ飛ばされてしまうことがあります。
東京で働くつもりでいたのに気づけば違う県で働いていた…、なんてこともよくある話なので都内で働けるか確認しましょう!
早めに入局の意思を伝えたり、見学に行って顔を覚えてもらうと多少有利に働くので、積極的に行動しましょう。
関連病院の専門医プログラムに入れてもらえるか確認を!
医局の定員にひっかかり、大学病院の専門医プログラムに入れなかったとしても関連病院の専門医プログラムに採用してもらえることがあります。
例えば東京大学病院の専門医プログラムに採用してもらえなかったとしても、関連病院である日赤医療センターの専攻医として採用してもらえる可能性があるということです。
東大医局だけでなく、他の大学医局でも溢れてしまった人に対して、関連病院のプログラムを優先的に案内してもらえました。
定員人数が少なかったり、シーリングに引っかかりそうだったとしても医局側がうまく関連病院の枠を紹介してくれることがあるので、諦めずに確認するようにしましょう!
都内の某私立大学の医局に所属を希望しましたが、私自身地方出身で卒業大学も医局の大学とは違ったので、大学の専門医プログラムには入れてもらえませんでした。
困っていたところ医局長から提案があり、分院のプログラムに入れてもらえることになりました!
分院も都内だし、正直本院の大学病院よりもホワイトな働き方ができているので、この選択肢を取れて良かったなと思います。
諦めずに「何とかなりませんか…」と聞いて良かったです!
入局できなかった時のために働ける病院見ておくべし
ここまで出身大学以外に入局するとどうなるかや、人気の医局に入るにはどうすれば良いかを説明しました。
比較的嫌がらせもなく、関連病院を紹介してもらえることが多いですが、中には入局を断られた人もいます。
実際私の友人でも入局を断られて専門医プログラムに乗り損ねそうになった人も…
そんな時勤務先を紹介してくれたのが転職サイトでした。
転職サイトはもっと上の学年の医師向けと思いきや、専門医を取得したい若手や症例経験を積みたい専攻医にも職場を紹介してくれます。
登録するだけでどんな病院に行けそうか見られるので登録だけでもしておくことをおすすめします。
万が一、医局から漏れたり、うまく医局に馴染めなかった時に登録しておくとすぐ動けますよ。
医師転職ドットコム
なんといってもおすすめは医師転職ドットコムです。
その理由は求人数がダントツ多いから。
常に3万件以上の求人と1万件以上の非公開求人を持っています。
エージェントさんの質も高く、とても親身になって相談にのってくれます。
ここだけの話、他の転職サイトでは断られてしまうような相談にも親身になってのってくれます。
相当難しい条件の転職や相当医局をやめにくい状況でも大変頼りになりますよ。
\頼りになる転職サイト/
マイナビDOCTOR
他職種の転職にも強いマイナビDOCTOR。
40年以上の実績があるからこそ、案件数・回転率ともに上位。
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登録すれば医師賠償責任保険も入れるので、「うっかり保険に入り忘れた!」も防げます!
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【まとめ】出身大学以外の医局でも大丈夫!ただし将来はよく考えて…
医師が出身大学以外に入局するとどうなるかを紹介しました。
- 若手の医局人事で出身大学の方が有利ということはない
- 30代後半から出世に影響が出始める
- 院長クラスや教授は出身大学が優遇される
若いうちに嫌がらせや差別させることはまずありません。
それでも将来的にキャリア形成をしたい、教授を目指したい、関連病院の部長・院長クラスに就きたいなら出身者の方が有利です。
だからこそ自分がどの役職になりたいか、どんな医師になりたいかを考えておきましょう。