医局人事ってどう決まるの?
僻地に飛ばされたらどうしよう…
医局に所属していると、医局人事で大変な思いをすることがありますよね。
特に規模の大きい大学医局では、地方への異動を積極的に行うケースがあります。
では、一度決まってしまった医局人事を拒否することは出来ないのでしょうか。
この記事では、医局人事の仕組みや異動が必要な理由、飛ばされないためのコツを紹介していきます。
この記事を読めば、希望が通りやすくなる可能性が上がりますよ!
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医局員は医局人事を拒否できない?逃れられない仕組み
「医局人事」とは、医局に所属する医師(医局員)が関連病院へ異動することを指します。
毎年10月ごろに希望調査が行われ、年末に異動先が発表されるという流れです。
関連病院のリストから希望順位を決め、調査結果を元に医局長が異動先を決定します。
決定後、翌年の4月に新しい病院で勤務が始まるのです。
決まっちゃったらもう変更はできないの?
残念ながら、決定後に人事の変更はできません。
医局人事はローテーション式になっていて、誰かのポストが空いたら、別の医局員が異動しそのポストを埋めます。
だからこそ人事決定後に変更をすると他の医局員にも迷惑がかかるので、決まったあとの変更はできません。
医局人事とは?なぜ異動が必要なの?理由3つ
そもそもなぜ医局人事は、世の中に必要とされているのでしょうか。
実のところ医局人事は地域医療だけでなく、医師のためにも重要な役割を果たしています。
ここから詳しく解説していきます
様々な症例を経験するため
医局員が様々な症例を経験するために、医局人事が役立っています。
どこでも症例って見れるんじゃ…?
取り扱われる症例の種類や数は、病院の規模によって大きな偏りがあるのです。
(例1)A病院の場合 | (例2)B病院の場合 |
---|---|
呼吸器内科に力を入れていて最新の気管支鏡を揃えている 肺癌を重点的に扱っており基礎研究や治験も行っている | 風邪や胃腸炎など、Common Diseaseを広く扱っている 投薬治療を中心にしており手術件数は少ない |
(例1)A病院の場合 | (例2)B病院の場合 |
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呼吸器内科に力を入れていて最新の気管支鏡を揃えている 肺癌を重点的に扱っており基礎研究や治験も行っている | 風邪や胃腸炎など、Common Diseaseを広く扱っている 投薬治療を中心にしており手術件数は少ない |
それぞれの病院の規模や特色によっても、扱う症例は左右されます。
同じ病院に長期間勤めてしまうと、医局員の間で経験値に差が出来てしまう可能性も。
より多くの症例と出会うために、特に30代の若手医師を中心に医局人事は行われるようになっています。
地域の医師不足解消をするため
医局人事には、地域の医師不足を解消するといった役割もあります。
臨床医として症例数をこなしたい!
研究のためにデータを集めたい!地方じゃ無理…
希少な疾患や研究データは都心の大病院に集まりやすい傾向があります。
新しい技術や症例研究のため、どうしても医師は東京近郊に集中しやすいのです。
【都道府県別にみた人口10万対病院病床数】
”都道府県別にみると人口10万人に対し「全病床」は高知県(2,328.8 床)が最も多く、「精神病床」は長崎県(594.9 床)が最も多くなっている。「療養病床」は高知県(691.8 床)が最も多く、「一般病床」も高知県(1,109.3 床)が最多となっている。
また、それぞれ最も多い県と最も少ない県の比をみると、「全病床」は 2.9 倍、「精神病床」は 4.0倍、「療養病床」は5.0 倍、「一般病床」は2.2 倍となっている。”
引用元:厚生労働省 令和2年 医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況
令和2年に厚生労働省から発表された全国の医療施設動態では、人口 10 万対病院病床数が明らかになりました。
高知や長崎など地方では人口10万人あたりの病床数が多く、これは医療従事者1人当たりの患者数が多いことを意味します。
つまり地方では医師一人が担当する患者数が多く、医師不足であることが否めません。
医局はこうした医師不足を解消するため、地方に人員配置を行います。
医局人事のおかげで、地域医療は保たれているのです。
いろんな施設のやり方を経験するため
病院によって扱う症例が異なるのと同じように、診療方法やデバイスの有無も異なります。
- 問診、バイタルチェック、注射の準備や採血の実施は看護師に任せられる
- 診療に集中し、カルテ記載は手が空いてからでもOK
- 治療には最新の医療機器を使用する
- 受付や会計業務は医療事務に任せられる
- 問診、点滴ルートの確保、採血の実施から紹介状の作成まで全て医師が行う
- 医療機器が少なく、院内にある機器を代用して治療を実施する
看護師に任せられる領域も病院ごとに変わり、院内ルールで運用しています。
医師としてどんな病院でもやっていけるように、一通りの経験を積むための人事でもあるのです。
医局人事の希望調査はいつ?異動のタイミング時期は?
医局人事で希望調査と人事を発表するタイミングは、次の通りです。
希望調査の時期は医局によって異なりますが、おおよそ10月ごろとなっています。
12月の赴任発表後、決まってしまった人事の拒否はできません。
希望調査の注意点や、拒否ができない理由についてはここから解説していきます。
10月に希望調査がある
毎年10月に、全ての医局員を対象とした希望調査が実施されます。
希望調査表が渡され、第一希望から第五希望までを記入しなければなりません。
希望できる病院は決まっているため、関連病院の中から希望する赴任先を選びます。
- 周りに遠慮して人気のない病院名を記入しない
- 「希望なし」の白紙は絶対NG
- 第一希望から第五希望まで埋める
希望調査を元に、各赴任先を医局長が決定します。
「希望なし」だと、思いもよらない僻地に飛ばされることも…。
また新人だからと言って、遠慮して人気のない病院は決して書かないでください。
新人医師の場合、赴任後2~3年は異動がありません。
つまり、僻地で3年間勤め続けなければならなくなるのです。
やっぱりちゃんと希望を書いとけばよかった…
後になって後悔しては遅いので、しっかりと第五希望まで埋めるようにしましょう。
12月に赴任先を発表
希望調査が終了したら、医局長が全医局員の赴任先を決めます。
4月から新しい病院でスムーズに勤務できるよう、発表は12月中に行われることがほとんど。
医局によっては年末ギリギリの発表になるので、医局員はドキドキしながら発表を待つことになります。
赴任先が決まったら、4月の勤務開始に向けて準備開始です。
【勤務開始に向けての準備】
- 後任医師へ患者の引き継ぎやカルテ整理を行う
- 引っ越しの手続きをする
- 赴任先へ医師免許等を提出する
- スタッフや患者へ異動の挨拶をする
- 同僚医師へ外来枠や委員会の引き継ぎを行う
引っ越しを伴う場合、早め早めの準備が必要!
【注意】医局人事が決まった後は変更できない
医局人事が決まった後、基本的に変更はできません。
- 人事はローテーション式で、拒否すると欠番が出てしまう
- 拒否した人の代わりに、別の医局員が異動となる
- 代理が見つからなければ、赴任先の病院は次の人事まで医師がいない状態になる
もし人事を拒否してしまうと、あなたの代わりに誰かが異動となります。
異動先が決まってたのに、また変更…?
赴任先に引っ越しが完了している医局員であっても、問答無用で代わりに飛ばされます。
代理医師との関係がギクシャクしてしまうのは、簡単に想像できてしまいますよね。
万が一代理が見つからなかった場合、関連病院は医師が足りない状態になります。
来年度まで医師が一人足りない…!
拒否すると医局だけでなく、関連病院からの信頼を失う危険性も。
一人の拒否が大勢の人を巻き込んでしまうため、医局人事は拒否できない仕組みなのです。
医局人事はパワハラ?【飛ばされないコツ3つ】
都心から地方へ飛ばされるのは、珍しい話ではありません。
できれば遠くに飛ばされたくないな…
不本意な人事異動は、できれば避けたいと考えてしまいますよね。
医局人事で希望しない地に飛ばされないために、次の3つを実践することがおすすめです。
すぐ実践できるものばかりなのでしっかりチェックしましょう!
希望調査は行きたい病院しか書かない
医局人事は、基本的に希望調査を元に決定されます。
どうせ希望通らないし、適当でいいや…
躍起になって適当に病院名を書いたり、白紙のまま出したりするのは絶対に避けましょう。
希望調査は、あくまで希望調査です。
適当に病院名を書いたとしても、医局長に「行きたい病院」として捉えられてしまいます。
最悪の場合、行きたくなかった病院に飛ばされてしまうケースも。
たとえ人気病院を書くのは気が引けても、堂々と自信を持って記入しましょう。
飛ばされたくない事情は先に言う
どうしても事情を抱えている場合、飛ばされたくない理由を先に言うのも大切です。
必ず希望調査が始まったタイミングで、医局長に直接言うようにしましょう。
【飛ばされたくない事情の例】
- 結婚を控えていて、今の地域から離れたくない
- 妊娠中で、産休を取りやすい病院を希望している
- オペ件数を増やしたいから病床数の多い病院がいい
人事が決まってから、伝えるのはダメの?
いかに家族が絡む事情であっても、人事が発表されてからの相談は避けることをおすすめします。
医局内では、医局長の決定が絶対という風習があります。
医局長の決定を覆すことは、医局や医局員に文句を言っているのと同じだと扱われるのです。
突然の妊娠発覚や発病など、やむを得ない事情以外は事前に相談しましょう。
言ったもん勝ち!遠慮せず伝える!
医局に入ったばかりだしな…
医師としてまだまだ若手だし…
医局に所属したての若手医師だと、空気を読まなければと遠慮がちになってしまいます。
希望調査でも遠慮が働き、誰も行きたがらない病院を自ら記入するケースも。
しかし希望調査は、言ったもん勝ちという側面を持ち合わせています。
遠慮なく自分の意思を伝えられた人が、希望通りの赴任先で働けるケースは意外にも多いのです。
ここで、実際に第一希望が通った実例を紹介します。
私はどうしても〇〇病院で働きたいと思っていました。関連病院の中だと、〇〇病院が一番オペ症例の取り扱いが多かったからです。
希望調査の時期が来た時、希望を通してもらう為医局長に直談判しに行きました。新人なのに生意気だと言われましたが、「行かせてもらえないなら医局を辞めます!」と強気に伝えました。
その場で回答は得られませんでしたが、その年の赴任先発表で無事に希望が通りました。おかげで症例の経験を積ませてもらうことができ、サブスペシャリティの資格も取得できました。(消化器外科医 Aさん)
時には先輩を立てることや、先輩を意思を優先することはとても重要です。
しかし自分の人生は、自分で切り開かねばなりません。
どうしてもやりたいことや飛ばされたくない理由があれば、遠慮せずにはっきり伝えましょう。
固い意志を持ってしっかり伝えよう!
医局人事は何歳まで続く?何年ごとにいつまで続くか解説!
医局のルールや風習によって頻度は異なりますが、多くの場合は次の頻度で医局人事が行わます。
医局人事は毎年行われ、医局員の異動頻度は年齢によって変わってきます。
ここから詳しく解説していきます。
30代までは2〜3年に1回異動
医局に医師が所属するタイミングは、おおよそ26歳前後となっています。
30代前後までは少しでも多くの症例や、臨床経験を積む必要がある時期です。
より多くの関連病院で働くために、ほとんどの場合2~3年に一度は医局人事で異動となります。
関西から北陸、中国地方から関東へなど、異動のたび引っ越しになるケースも。
引っ越し費用がかさんじゃうよ…
世間的に30代は結婚や出産の時期であり、度重なる引っ越しでうんざりする医局員も少なくありません。
40代は5年に1回くらい
40代になると、異動の頻度は落ち着いていきます。
院内でも責任のある立場になることが多く、医長などの役職を与えられるケースが多いです。
診療などの業務に加え、医長としての仕事も増えていきます。
【主な医長の仕事】
- 初期研修医の指導・評価
- 専攻医のバックアップ・育成
- 学会・セミナーの座長
- 院内の委員会への参加
- 製薬会社とのやりとり
医長は病院の規模によって呼び方や業務が異なりますが、実力のある中堅医師です。
一つの病院でしっかりと役目を果たすためにも、異動が少なくなっていきます。
異動がない分、マイホームを購入する医師も多くなるよ!
50代以降は異動することはない
50代以降になると、総合病院の部長あるいは医長になっているケースが多くなります。
発言にも力を持つようになるため、規模の大きい病院で定年まで勤めるのがセオリーです。
ベテラン医師として、いわゆる医局の顔になることもしばしば。
【主な部長の仕事】
- 他科や地域の病院との連携
- J-OSLERの添削
- 学会の役員・代議員の選出
- 病院幹部との会議
- 大学医局とのやりとり
病院によっては、部長から院長や副院長に昇進する医師もいます。
異動がなくなる代わりに、若手育成に力を入れるベテラン医師もいるよ!
医局人事のパワハラにうんざり…異動を断れなかった実例3つ
医局人事による異動は、医局員の生活を左右する重要なイベントです。
異動先によっては、家族と引き離されてしまうケースも決して少なくはありません。
今回、医局人事で疲弊してしまった経験のある方に、当時の話を伺うことが出来ました。
中には退局を選択せざるを得なかった医局員もいます。
もしかすると、あなたの医師人生にも同じことが起こるかもしれません。
ここから詳しく紹介するので、今後のためにぜひ参考にしてみてください。
毎回引っ越しをすることにうんざり
医局に所属してから、たった6年で計4回の引っ越しをしました。
当時は今のようにフリーレント物件や初期費用が分割できるプランもなく、引っ越しの度に数十万の費用を払っていました。
異動の発表後はとにかく時間がなくて、物件探しも満足にできた試しはありません。
度重なる引っ越しでお金は貯まらず…何時どこに飛ばされるか直前まで分からなかったので、
マイホームの購入も断念しました。(麻酔科医男性 Cさん)
Cさんの所属していた医局は規模が大きく、地方の医師不足解消に特に力を入れていたそうです。
この6年の経験から、事前に異動先の希望を直接伝える形に切り替えたとのことでした。
その後は異動も落ち着き、希望が通るようになったそうです。
異動の希望は、遠慮せずしっかり伝えるようにするのが大切ですね。
医局人事で家族がバラバラになった
私も夫も医師で、同じ医局に所属していました。
東京の▲▲病院で一緒に勤めていましたが、ある年の人事で私は静岡に、夫は群馬に赴任することが決まりました。
最初こそ互いに新幹線で通勤していたのですが、すれ違うことが増えていきました。
私も夫も子供を持つことが夢だったので、話し合いの末に私が退局することに。
同じ医局なら夫婦で近い病院に赴任させてくれると思っていたのですが、そうはいきませんでした。(内科専門医女性 Bさん)
Bさんは、生活を優先して退局を選ばざるを得なかったそうです。
前もって夫婦の事情などを話す機会もなかったようで、決定後の取り下げも難しかったとのことでした。
医局人事は、医局員側から希望を伝えない限りランダムで赴任先が決められます。
当たり前に思えることでも、しっかりと口に出して伝えましょう。
子供の学校の関係で近くの病院で働きたかった
妻と子供と3人で暮らしていました。
子育てにも積極的に参加し、妻と相談して私立の小学校へ入学させることにしたのですが、
その矢先で他県への異動が決まってしまいました。
既に入学も決まっていたし、子供への影響を考えて私ひとりで単身赴任することにしました。
あの時の人事は本当に恨んでも恨み切れません。(呼吸器内科専門医男性 Dさん)
Dさんは希望調査時に、子供の小学校の近くで働きたい旨を伝えていたそうです。
しかし希望が通らず、他県への単身赴任する羽目になってしまったとのことでした。
医局人事は、あくまでも医局長に決定権があります。
絶対に通したい希望がある場合は、勇気を出して直談判しに行きましょう。
医局人事に振り回されないために他の病院で働く選択肢を持とう!
医局に所属している限り、残念ながら医局人事を避けることはできません。
しかし将来の不安から、なかなか退局に踏み出せない人は多くいます。
どうにか逃げ出せる方法はないのかな…?
こんな時は直ぐに辞めるのではなく、「他の病院も探してみる」という広い視野を持ってみてください。
- 今の環境と比べてみる事ができる
- 自分の気持ちを整理する良いキッカケになる
- 退局したとき、スムーズに再就職先を見つけられる
関連病院以外の情報を知ることで、自分の置かれた状況や気持ちの整理が出来るようになります。
もし働きたい病院が見つかったら、再就職の相談もこっそり行うことが可能です。
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【まとめ】医局を辞めるなら揉めない退局にしよう!
今回は医局人事のタイミングや、拒否が出来ない理由について紹介していきました。
- 医局人事には地方の医師不足解消だけでなく、医局員に経験を積ませる役割がある
- 人事を拒否してしまうと、別の医局員が異動しそのポストを埋めなければならない
- 希望調査は第五希望までしっかり埋める
- 飛ばされないために遠慮はNG!時には希望を直接伝える
医局員であれば、医局人事を覆すことは出来ません。
しかし工夫次第では、希望通りの赴任先に働くことも夢ではないのです。
医師人生がより豊かなものになるように、遠慮せずに希望を伝えましょう!